佐倉統 Osamu Sakura
1960年東京生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程終了後、三菱化成生命科学研究所、横浜国立大学経営学部などを経て、東京大学大学院情報学環助教授。専門は進化生物学、生物学史、科学技術社会論。
主な著書に、『現代思想としての環境問題』(中公新書、1992年)、『遺伝子vsミーム−教育・環境・民族対立−』(廣済堂出版、2001年)、『進化論という考えかた』(講談社現代新書、2002年)、『進化論の挑戦』(角川書店、2003)、『おはようからおやすみまでの科学』(古田ゆかり氏との共著、筑摩書房、2006年)など。 |
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○人間は社会をつくる動物
人間は、10万年前のネアンデルタール人の時代から共同体を作ってきた。
共同するのに大事なコミュニケーション能力は、子ども時代の遊びの中で身につけた。だが今は、その場が少なくなっている。子どもが社会的に成長する場をつくり、子どもを支えることが必要。
また、人間は未熟なまま産まれるため、育児中の母親にはまわりのサポートが必要なのに、今の時代、それがむずかしくなっている。
一方、人間は仲間とよそものの境目をつくることで共同体意識をつくってきた。紀元前の時代から差別するという性質を人間はもった。
しかし、人種の違いは生物学的にいうと遺伝子レベルでの差はそんなに大きいわけでない。科学的な知識を持つことは差別に根拠がないことの証明になる。
人間は学習するように遺伝的になっていて、子どもが好奇心旺盛なのはそのため。学習によっていかようにもなる可能性があるので、なにを教えるかが大事。人種差別の問題も、人類は遺伝子レベルではみな同じだと教えることが紛争の解決につながるのではないか。
○最近の脳科学
あかちゃんのことが科学的に解明されだした。最近は脳科学の研究がさかんで早期教育の重要性がいわれているが、脳の仕組みのすべてが解明しているわけではないし、意見がわかれているものなので鵜呑みにしてはいけない。逆に子育ての立場からこういう点の研究をしてもらえないか、というような提案を脳科学者にしていくことが大事。
○科学で世界を理解する
科学は、発見されたことを他の人が証明することで科学的知識として認められるもの、民主的プロセスを経てみんなの知識を積み上げるという優れたものである。日本にはサイエンスコミュニケーションというみんなで議論する場がない。日本は国民全体の科学の水準が高かったが、今理科離れが進んでいるといわれている。しかし、社会全体がかわっていくためには科学的考え方が根付くことが必要。今の脳科学のブームという一過性のもので終わらせず、次の世代に伝えないといけない。
○子どもが育つコミュニティ
人とつきあう能力は社会の中で培われる。しかし今の子どもには親と先生以外の大人に会う機会がなかなかない。子どもが社会的に成長できるコミュニティをつくることは現代社会の中で大きな課題のひとつ。さまざまな試みをしながらいろんな形で続けていく必要がある。
○さいごに
生物自体に環境をかえる力がある、そのかわった環境にあわせてまた生物は進化する。
人間は環境を構築する力がある。欲望をコントロールする力がある。人間を科学の立場からみるとおもしろい。
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